Book Lovers' Salon

現在は月曜と水曜に御茶ノ水周辺で集う読書家のサロン。ここではそのためのサイトを準備しています。

📕:Humanity/Art/;📗:History;📘:Science;📚:Technology/Future;📖:questions

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積読書架

 

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実は僕はそれほど読書が好きじゃないんです。世間一般の基準からすれば読書家なんでしょうけど、正直本を読むのはそれほど素晴らしい経験ではないのです。たぶんストレスで強張った顔でタバコを貪るチェーンスモーカーと似ているのだと思います。やめれるのならやめたい。気がついたら手には本、あらら、という具合でいつでも自分に吸い付いてくるこいつらを振り払えずカツアゲされ、相当な時間と労力と金が巻き上げられています。これは冗談ではなく、思っておられる以上にひどい悪弊です。冊数をこなすことが目的になっていきます。本がないとアイデアが一切湧かなくなります。自分で考える時間がほとんど取れなくなります。自分で考えるとは何か、それさえ忘れていきます。もっと本と(つまりは情報と)上手に付き合っていく方法を見つけないといけないな、そうしみじみ感じます。

📕自己啓発本

大好物は自己啓発本です☆の私が、これまで読んできた無数の啓発本から一冊一冊丹念に篩にかけてつ良質の物を載せていく予定です。レベル4・5の本しか取り上げませんのでご安心を。低偏差値高校のダイヤの原石がまがい物に見えてしまうみたく、世の中があまりに多くの低レベルな自己啓発書で飽和しているために、良書も負のオーラをまとってしまっているのです。また、日本の出版文化では、ことこの分野の本の場合に原著のタイトルを金メッキで塗装して品位を下げるという風習が存在しますので、その点ご寛恕のほど。どうか蔑みの目で眺める前に何冊か目を通してみてください。よろしくお願いいたします。

そして、「え! これも自己啓発本なの!?」とお思いになるでしょうが、私の定義は非常に広いのです。

 

自己啓発書を読むときには、精神を最高度に緊張させて向かうのがよい。ポストモダン小説を読むときの姿勢で向かうの。さもなくばただのアヘン吸引者と成り下がるでしょう。

啓発本の海に溺れないようにしよう。これはたかが3、400ページばかしつづく文字の列でしかない。脳には宇宙の全原子の数を上回るシナプス結合のあり得るパターンがある。考える中心はわたしなのだ。

 

 

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

 

 

僕はなんていうかこんな感じの「ビジネス書」ないし「自己啓発書」なんていうものがあまり好きじゃなかった。というか心底嫌いだった。一年生の時にデールカーネギーとか、コーヴィーとかの本を読んで、なんかちゃうなこれと思ったそこらによくいる並の「哲学少年」だったのだ。何か下品で低俗なものを感じた。何かマニピュレーションの匂いを嗅ぎつけた。何か盲従が求められているように感じた。哲学が一番大事にしている「自分で獲得する真理」の偉大さを一顧だにしていないように感じだ。そこでは思考の欠如が明徴だと覚えた。

でもね、こういう態度はカテゴリーの誤謬なのだ。僕らはいろんなものをひとくくりにして考える。それはすごく理にかなっていることで、僕らは人間がいろんなものをひとくくりにして考えているのを知っているから、こちらもいろんなものをひとくくりにして考える。カテゴリー化は、だけれどコミュニケーションの齟齬のもとだ(たとえば「新書」というカテゴリーを考えてみて!)。この前いったかもしれないけれど、あらゆる情報を平面上に位置付けてみる癖がこれからすごく大事になってくると思う(意味不明だろうから、また!)。あらゆる本も、ツイッターつぶやきも、テレビのあのバカキャスターの解説も、情報という大きな平板上に位置づけて、それの織りなすコンテクストに俯瞰的に思いをやつすことが大事なのだ。

え、何言っているのかわかんない? うん、それは95%書き手のせいだから、安心しておいても損失期待値は低めだから大丈夫だ! まあ、とりあえずこの本だけれど、結構自信を持って勧められる。<自分にとって何がエッセンシャルなのだろう>ーーこの問いを問い続ける習慣がどれだけ大事かを思い知らせてくれる。薄い本だから、便所のトイレットペーパーの例のあそこの上にでも置いておいてペラペラとめくりながら、思い立ったらノートでもつくってみたらすごくいいと思う。僕も作っているからまたみせましょう。あとここにでてくるアダムグラントとダニエルピンクの本も素晴らしい「ビジネス書」だぞ!

 

Resilience: Hard-Won Wisdom for Living a Better Life

Resilience: Hard-Won Wisdom for Living a Better Life

 

 I am absolutely confident in recommending this one.

 

The Obstacle is the Way: The Ancient Art of Turning Adversity to Advantage

The Obstacle is the Way: The Ancient Art of Turning Adversity to Advantage

 

 

 

Ego is the Enemy: The Fight to Master Our Greatest Opponent

Ego is the Enemy: The Fight to Master Our Greatest Opponent

 

 

 

 

マインドセット「やればできる! 」の研究

マインドセット「やればできる! 」の研究

 

 

やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

 

 

 僕はこれ必読だと思う(ちょっと言い過ぎな気持ちもする)。初めの250ページだけでいいから読んでみて。ただ「人生哲学本」(自己啓発本とでも)っていうのは、ほかの多くの本でもそうなんだけど、読み手がどんな経験をして来て、世界一般をどういう風に認識しているかといったことに応じて、だいぶ解釈が違ってきちゃうところがある。安っぽく見えちゃたり、信者になってハマりこんじゃったりする。そして往々にして、本っていうのは3、4百ページぐらいつづくだけの文字列でしかないのだ。そこから何が学べるだろう? 何が学べないのだろう? 何が書けて、何が書けないのだろう? 四年ぐらい前に日本の片田舎からやってきた世間知らずの僕がこの本をを読んでも、たぶんあんまり理解できなかったと思うのだ。意味がわからなかったと思う。概念の連関を支える骨格が見えなかったと思う。大事なのは本に書かれていることじゃないとわからなかったと思う。でもいまならできる。
ちょっと長くなりそうだからまた今度😉

〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る (ハヤカワ・ノンフィクション)

〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る (ハヤカワ・ノンフィクション)

 

 

amy cuddyのテッドトークはわたしが高校生の時に見て、その熱狂が世界に広がるのをリアルタイムで目撃した。パワーポーズムーブメントのようなものがあった。身体運動が精神を形成しているという話に、たくさんの控えめで内向的な人がそこにsilver liningをみて、胸に熱いものを感じたのだと思う。心身問題という問題設定(精神という高次の機能と身体運動という低次の機能が別の領域に属していることを前提とした問題設定)は、精神と身体活動を切り分けて考える考え方を暗黙のうちに根付かせてしまったけれど、それは間違っている。人間の仕組みに対する従来の非全体論的説明(また!)はあまりに僕らのうちに巣食っているけれど、その考えは変えなくちゃいけない。

こういうテーマだと(精神活動の操作とかね)、著者の人生哲学が紙背に潜んでいるのを否が応でも感じさせ、それをどう考えるのかという問いに自分で向き合わなくちゃならない。研究者は研究者であって、哲学は彼らから正当に期待すべきものではないのだというのは、後になってわかったことだ。彼らの提示する情報に接する重要性は、それでも低減されない。ちょっと覗いてみてほしい。特に、いつも緊張で押しつぶされそうに感じる人にはぜひ。いろんな糸が絡まり合ってる様が見えるかな? 少し散漫なところがあるけれど、色々と裨益するところ大なのは確かなので、いずれね。

 

ハーバードの自分を知る技術 悩めるエリートたちの人生戦略ロードマップ

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  • 作者: ロバート・スティーヴン・カプラン,福井久美子
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
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ハーバードの“正しい疑問

ハーバードの“正しい疑問"を持つ技術 成果を上げるリーダーの習慣

  • 作者: ロバート・スティーヴン・カプラン,福井久美子
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ハーバードのリーダーシップ講義  「自分の殻」を打ち破る

ハーバードのリーダーシップ講義 「自分の殻」を打ち破る

  • 作者: ロバート・スティーヴン・カプラン,福井久美子
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メンバーの才能を開花させる技法

メンバーの才能を開花させる技法

  • 作者: リズ・ワイズマン,Liz Wiseman,グレッグ・マキューン,Greg McKeown,(序文)スティーブン・R・コヴィー,Stephen R. Covey,関美和
  • 出版社/メーカー: 海と月社
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GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

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ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 (単行本)

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ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法

ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法

 

 

 

 

TED 驚異のプレゼン 人を惹きつけ、心を動かす9つの法則

TED 驚異のプレゼン 人を惹きつけ、心を動かす9つの法則

 

 

  •  キャリア本

 

 

What Color Is Your Parachute? 2017: A Practical Manual for Job-Hunters and Career-Changers

What Color Is Your Parachute? 2017: A Practical Manual for Job-Hunters and Career-Changers

 

 夏に半泣きになりながら就職本を漁っているときに、この本にも出会った。これはアメリカで50年近く毎年度改訂され続けてる超ロングセラーで、キャリア関係で悩みがある人が必ず手を出すお釈迦の蜘蛛の糸みたいな本らしい(そうそう、ケヴィンケリーもこの新版に推薦文書いてましたぞ)。読んだ印象は、非常に良心的で、現実的で、抽象的にならず難しすぎない実践的なアドバイスを、パニクっている人から達観してる人まで含めて広い層に提供している、コンパクトにまとまったプラクティカルマニュアルという感じ。巷の恐怖を煽り立てるマッチポンプ本や明らかに無教養の人間の書いた小銭稼ぎ本、それに意識高すぎ本に頭をやられてしまう前にこういう地に足のついた正統派の議論に接せられるのは、案外幸福なことなのだ。

 

Amazon.co.jp: 瀧本 哲史:作品一覧、著者略歴 まあちょっと見てみてね

 

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

 

 

まあ読みなって

 

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

 

 

これは読まなくてもいいかな
 

ハーバード流 キャリア・チェンジ術

ハーバード流 キャリア・チェンジ術

 

 

キャリアチェンジ!?って思ったでしょ。僕も思った。でもこういうのに若いうちに接しといたほうがいいと思うのだ。いつかその時がくるのだもの。

 

  • 起業家本

起業家本を読んでいると、モチベーションとは一体なんじゃという謎が出現する。

 

ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか

 

 

ビジネス本の中には起業家本という下位概念が含まれている。僕が高校卒業までに知らなかったけれど、あとで習った大事なことがある。どこにあってもトップに触れ続けろ、というやつだ。僕は今もこの意味をちゃんと把握できてはいないけど(実践できてるなんて口が裂けても言えないけど)、漠然とながら輪郭をなぞれてはいる。情報は一枚のタブロー上におさめて(広大なものになったり、リーマン幾何学とか、フラクタルのそれみたいになるのだけれど)、そこで相互に織りなす布置連関を「一つの視点から」(ちょっと語弊があるよ)眺めておくのが大事なんだとは、前も書いた(ちょっと休憩して加筆)
 

 泣けてくる

 

ボールド 突き抜ける力 超ド級の成長と富を手に入れ、世界を変える方法

ボールド 突き抜ける力 超ド級の成長と富を手に入れ、世界を変える方法

 

起業家本になんで手を出すのが大事なのかは前に書いた。それでこの本は、例のシンギュラリティ大学の共同設立者であらせられるディアマンディス氏の書いた、次の時代の起業家に向けられた本なのだけれど、彼はMITの学生だったときに、あのアーサーcクラークとコネを作り上げ、これまで存在しなかった世界学生宇宙協会を作って、世界中の大学に支部を設けて、世界大会なんかも開催しちゃって、宇宙大学なる専門機関もこしらえてNASAにバリバリと生徒を送り込む、医学・生命科学・航空力学の学位を持っているシリアルアントレプレナーという、こういう話に弱い人ならお天道様を拝むが如く地べたに平服して最高の従属を示したついでにslave-in-chiefにメタモルフォーゼしてしまいかねないような、すごい経歴の持ち主だ。

この本は、エクストリームの何たるか、その図版における位置を教えてくれる。人を動かすには? 邁進する動力はどうしたら持てる? どんなフレームをもって物事を測ればいい? この本を読めば(少なくとも一時的には) 、そもそもその問いかけ自体が無意味に思えるほどのテクトニックプレートの大移動が自身に起きたことに気付くはず。僕はなにか毎日が単調さに埋め尽くされてるように感じることがあったら、こんな「でかい」本を小脇に抱えて近所のモスバーガーに向かう。そうして読んでいるうちに、どこか遠くに、オームの群れが始動しているのがみえる。どこか遠く、もしかするとすごく近くに、人目のつかない場所でとてつもない力が動いているのがみえる。いろんな物事がひどく貧相に思えた。自分のこんなフレームがやけに古ぼけて写った。そして僕の内に枯れ果て忘れ去られた泉から立ち上る、途方も無いパワーを感じた。ここには、次世代の「起業家」の使うべきツール、採用するべきマインドセット、見据えるべき未来図が開陳されている。彼曰く、現時点で最高の起業家本と自負しているらしい。まとまりがいいかときかれたら、そうだとは言えない。けれど、「つまみ食い」の読書というのも、この本ならばそれだけの価値は見込めるとおもうのだ。

シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法 ビジネスを指数関数的に急成長させる

シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法 ビジネスを指数関数的に急成長させる

 

 

 

リーン・スタートアップ

リーン・スタートアップ

 

 

 

 

 

 

組織論

学習する組織――システム思考で未来を創造する

学習する組織――システム思考で未来を創造する

 

 

 

 

 

 

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

 

 

 

 



📗国際情勢

*最新動向

 

国際秩序

国際秩序

 

 

Connectography: Mapping the Global Network Revolution (English Edition)

Connectography: Mapping the Global Network Revolution (English Edition)


The Seventh Sense: Power, Fortune, and Survival in the Age of Networks

The Seventh Sense: Power, Fortune, and Survival in the Age of Networks

The Rise and Fall of Nations: Forces of Change in the Post-Crisis World

The Rise and Fall of Nations: Forces of Change in the Post-Crisis World

This Brave New World: India, China and the United States

This Brave New World: India, China and the United States

 

 

*中国

 

中国共産党 支配者たちの秘密の世界

中国共産党 支配者たちの秘密の世界

 

 

 

 

 

*インド 

インド現代史 【上巻】―1947-2007― (世界歴史叢書)

インド現代史 【上巻】―1947-2007― (世界歴史叢書)

 

巨大な決定版インド現代史。 

Behind the Beautiful Forevers: Life, death, and hope in a Mumbai undercity

Behind the Beautiful Forevers: Life, death, and hope in a Mumbai undercity

 

 全米図書賞受賞

 

 

*アフリカ

Africa: A Biography of the Continent

Africa: A Biography of the Continent

Fortunes of Africa: A 5,000 Year History of Wealth, Greed and Endeavour

Fortunes of Africa: A 5,000 Year History of Wealth, Greed and Endeavour

The State of Africa: A History of the Continent Since Independence. Martin Meredith

The State of Africa: A History of the Continent Since Independence. Martin Meredith

超巨編だけれど、この3冊以外はまあ当面脇に置いておいていいだろうという感じの、現在のところ一般書としては決定版アフリカ史。

 

 

ジェノサイドの丘〈新装版〉―ルワンダ虐殺の隠された真実

ジェノサイドの丘〈新装版〉―ルワンダ虐殺の隠された真実

 

 

 

 

 

喰い尽くされるアフリカ 欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日

喰い尽くされるアフリカ 欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日

 

 

中国第二の大陸 アフリカ:一〇〇万の移民が築く新たな帝国

中国第二の大陸 アフリカ:一〇〇万の移民が築く新たな帝国

 

 おー、血湧き肉躍るという感じでしょうか

 

 

 

 

*「中東」

 

Black Flags: The Rise of ISIS

Black Flags: The Rise of ISIS

 

今年のピュリッツァー賞受賞作 

 

*ロシア 

Nothing Is True and Everything Is Possible: The Surreal Heart of the New Russia

Nothing Is True and Everything Is Possible: The Surreal Heart of the New Russia

 

 

 

【書評】ヤコブ・ビリング『児童性愛者』

 

児童性愛者―ペドファイル

児童性愛者―ペドファイル

 

いろいろ考えさせてくれるルポ。自由意思って何? 子供って何? 心の傷って何? 病気って、恋愛って、悪って何? どういう奴がどんな制裁に値するの? 一体ペドはこれからどんなふうに生きていくの? ……被害者らのモレストされた嫌な思い出をほじくり出したり、途上国の現場に突撃していったり、ペドと直に触れ合ったりしてるうちに、何かが葛藤するのに気づく著者(ふとおもったけど、彼この文章をいつ書いたんだろう)。吐き気のするほどの嫌悪感と、しかし感じる遣る瀬無い思いに、インドのスイートルームの中からふと外に目をやる。空はからっと晴れていて、海は遠くまで広がってて、街はやっぱり賑やかで……。ねえペド諸賢、あなたたちをを縛りつけてるものっていったいなんなんだろう?

【書評】ロジャー・イーカーチ『失われた夜の歴史』

失われた夜の歴史

失われた夜の歴史

 大量の一次資料から、モザイク的なやり方で当時の夜を浮かび上がらせていく。その手法のせいでちょっとイライラするけど、そこそこうまくまとめてくれてる。難しいしねこういうの。夜の姿が大きく変わっていく時期をだいたい産業革命ごろに見るのがこの本の枠組みなんだけど、都市と田舎の違いとかなんやかやがあってそんなに見通しがいいってわけじゃない。でも、いろんな要素を拾い出してくれてるのは逆に好感が持てる。歴史の組み立てはそんな簡単にできないし、しちゃいかんのだもの。
 昔の人の夜は、ロマン主義者がいうみたいな静かで安静な夜なんかじゃなくて、みんないつ侵入されるかってビクビクしてて、通りのうるさい音にもイライラしてて、不浄なる三位一体「ノミ・シラミ・トコジラミ」の巣食う寝床でもうカンカンになってたわけで、むしろ現代人の方が圧倒的に安静な夜を過ごせているのは確かなんだ。夕暮れも文学なんかでは美しいものというよりは怖いものとして現れていた。暴行や窃盗や強盗が闇に乗じてそこらへんに闊歩してたわけだし。そういうふうな夜に行われる犯罪には逮捕権の拡大とか拷問の許容とか重罰とかでなんとか抑えようとしたけれど、夜はそんなのをものともしなかった。ある弁護士によれば1742年にロンドンで午後10時以後通りをひとりで歩いている者はいなかった。棍棒を持った犯罪者たちが目抜き通りで幅を利かせていたのだ。安全を守る夜警ってのは「ある評者によれば、「人類のクズ」だった」んだって。キツイものね。そんなにたくさんいたわけじゃないから返り討ちにあっちゃうかもしれなかったし。レンブラントのアレみたいなのでは全然なかったんだそうな。それに夜中は大声で歌い散らしててまあまあ喧しかったそうな。
 各都市で照明設備が大きく検討され始めたのが17世紀は後半になってからで、ファンデルヘイデンの灯油ランプの実装が、パリは1667年に、ロンドンは1683年になされた。でもそれらは今の基準からすれば全く不十分だった。全然明るくなかった。まずそもそもそんなものはほとんど置かれてなかった。家庭じゃ19世紀にマッチが発明されるまでは火を起こすのは一苦労で、種火はだいたい隣人から調達した燃えさしだった。燃料には普通の家なら年に1トンから2トンの木を使用し、下層民なら家畜とかのウンコが使用された。産業革命前の照明は、1000年以上前から変わらずにロウソクとランプとキャンドルウッドの三つだった。そこで、道の照明が変わるのに決定的だったのが1807年の(ウィリアムマードックの石炭ガスを使った)ガス灯の導入だ。ロンドンでこれがなされてから、ほかの都市がどんどん真似し始めた。従来の灯りの10倍以上の明るさだからそれはもうすごく明るかった。明るすぎた。そして夜警もどんどん増える人口に対処しきれなくなり、権力の介入に敏感だったイギリスでも1829年にロンドン警察設立にともなってに消えていく。犯罪者たちは通りから消えた。そしてこの時代になると、もう夜は消費者の世界、台頭してくる中産階級の世界、おどろおどろしさがとれた楽しい世界になっていた。たしかに生活の変化にはすごく地域差があったけれど、それも世紀末にもなってくると田舎といえども話は同じだった。面白いのは、ガス灯もやっぱり主要な通りだけを照らしてて、犯罪者たちはつぎに貧困層の界隈に集まってくるようになったといっているトコ。夜はみなほぼ平等に危険だったのが、その平等性がなくなっちまったなーという話だ。
 こういう話を絵画とか文学とかを引き合いに出して説明してくれるのでいろいろ勉強になりました。ほかにも夜の営みとか、酒場の乱痴気騒ぎとか、暗いところでのお話の効果とか、昔の人の眠りにはfirst sleepとsecond sleepがあってその間に一時間ぐらい起きてたのだとか、面白い話が多々。最後のは、なんかその間に見た夢について考えたり瞑想したりして内省的になる時間だったらしくて、昔の人は人生の全体像に思いを巡らしていたんだけど、現代の人はそういう時間もどんどんなくなり睡眠時間も少なくなり、大事なものを失っているんじゃなかろうか、っていうはなしへとつづく……。「みんなきけんだよ! もうちょっとじっくり考える時間をとろうよ! バカになっちゃだめだ! なにやら米軍が七日間睡眠しなくてもよい戦闘人間を作ろうと画策してるっていう情報を僕は聞いているぞ(Shiver!!)! みんな騙されちゃだめだ! しっかり寝よう! 考えよう! スイミンダイジ!!」……まあこういうのは置いとくてして、面白い本でした。先駆的な夜についての研究だそうです(2005)。樺山書評